「慢性膵炎(まんせいすいえん、Chronic pancreatitis、ICD-10 K86)」について、きちんと理解できていますか?
聞いたことはあるけど・・・詳しく知らないんだよね・・・
- 膵炎って種類あるの?
- 膵炎って予防できるの?
- 慢性膵炎の治療方法について知りたいな
そんなメディカルスタッフ・コメディカルに向けて、いま押さえておきたい「慢性膵炎」の基礎知識を図解でまとめ、ざっくり解説していきます。
では、よろしくお願いします。
この記事では、次の疑問等を解説しています。
- 膵炎の種類
- 慢性膵炎とは?
- 膵臓の病気を予防する
- 慢性膵炎の治療

こんにちは!
えまかたん(@_emakatan)です。
ここで解説していることは、メディカルスタッフ・コメディカルには必須の基礎知識です。いざという時に困らないように、きちんと押さえておきましょう。
この記事の目次
【膵炎の種類】

膵炎の種類についてです。
その前に、膵臓についてざっくりおさらいしていきます。
膵臓は腹腔内にある臓器です。臓器の中では小さい部類になり、幅は3㎝程、長さは15㎝程、100g程度となります。また、形は数の子やおたまじゃくしの様です。そして、みぞおちと臍(へそ)の間、かつ、胃の背部(後ろ側)に位置しています。
また、膵臓の主な役割は2つあります。①食べ物を消化する酵素である膵液を作り出し、十二指腸へ分泌をします。②血液中の糖分をコントロールするホルモンであるインスリンなどを分泌します。
膵炎は、膵臓の細胞が何かしらの原因により破壊され、炎症が起きている状態を指します。ICD上では細かく分類されていますが、①慢性膵炎、②急性膵炎とに大別することができます。
- 慢性膵炎:膵臓が繰り返しの炎症で、正常な細胞が徐々に壊れ線維化し、機能が低下した疾患となります。不可逆的な疾患と言われており、治癒は見込めません。
- 急性膵炎:何かしらの原因により、膵臓が激しい炎症を一時的に起こしている疾患となります。こちらは一過性のため、治癒が見込めます。
【慢性膵炎とは?]

慢性膵炎とはなにかです。先ほどの続きになります。
慢性的に炎症を起こしている膵臓は、消化酵素である膵液が活性化した状態にあり、膵臓の細胞が消化酵素により溶けて、徐々に線維化していきます。そのため、膵臓はさらに小さく委縮していき、硬くなり、いわゆるボロボロの状態になってしましまいます。
さらに、膵液自体が変質していき、固まった膵液は膵管の中で石になってしましまいます。これを膵石と言います。
慢性膵炎の症状についてです。慢性膵炎の進行具合により、症状は異なります。
初期である代償期には、膵臓の機能が活発なので、膵液の影響で腹痛や腹部膨満感が生じることが多いです。腹痛は、膵臓の位置に近しい、みぞおちと臍の間や背部で怒ります。
移行期には、膵臓の機能が徐々に低下していきます。変質した膵液が固まった膵石が生じてきます。
後期である非代償期は、慢性的な膵臓の炎症が5~15年ほどの続いた時期であり、膵臓の機能はかなり低下しています。膵液もほとんど作ることができなくなっていますので、腹痛の症状はないことが多いです。また、膵臓のほとんどが壊れているので、外分泌が障害されることになり、脂肪やたんぱく質の消化酵素である膵液の分泌が低下し消化吸収の不良が生じます。結果として、悪臭を伴い薄黄色クリーム状で水に浮く、水様の脂肪便や栄養障害のため、体重減少や貧血などが生じます。 さらに、血糖を管理するインスリン等の分泌も障害されるので、糖尿病に進行する方もいます。
なお、慢性膵炎の新規発症患者数は、年間約1万8千人であり、約6万7千人の患者が今も治療を行っています。
好発年齢は、中高年に多いです。また、好発性別は男性が女性の4.6倍程と、男性は高リスクとなります。
男性が罹患する原因の約7割がアルコールによる飲酒となります。次いで原因不明の特発性となります。一方、女性が罹患する原因の約半数が原因不明の特発性となります。次いでアルコール・飲酒となります。
【膵臓の病気を予防する】

次に、膵臓の病気を予防するについてです。
- 飲酒を控える・断酒(アルコールによる影響が大きいため)
- 脂肪は控える(消化吸収が障害されているため)
- 香辛料は控える
- 野菜を摂る
- 暴飲暴食を避ける
- 便秘にさせない
- 脱水に気をつける
- 睡眠不足・ストレスを避ける
- タバコを吸わない
- 適度な運動をする
- 規則正しい生活を心がける
そして、慢性膵炎の検査についてです。主に、以下の検査があります。
- 問診
- 血液検査
- 画像検査
3の画像検査については、詳しくは説明しませんが、用途に合わせ、腹部エックス線(レントゲン・XP)検査、腹部(造影)CT検査、腹部超音波(エコー)検査、MRI(MR膵管胆管撮影(MRCP(Magnetic ResonanceCholangio Pancreatgraphy)))、超音波内視鏡(EUS)、内視鏡的逆行性胆道膵管造影法(ERCP(Endoscopic Retrograde Cholangiopancreatography))などがあります。
【慢性膵炎の治療】

最後に、慢性膵炎の治療についてです。
前項で解説した予防にも通じますが、進行期によって治療が大分されます。慢性膵炎になった場合には、消化器の臓器である膵臓機能が低下しているので、食事療法は要となります。
初期(代償期)~移行期では、消化酵素の分泌が活発化しています。そこに、脂肪分、油っこい食事を摂ると、消化吸収をしようとより多くの膵液が生じます。そのため、加分泌となった状態になるので、腹痛が生じやすくなります。
そのため、脂肪は、一日に30~35g程度(一般より少ない量)を目安に摂取するように心がけます。
また、後期(非代償期)では、より膵臓の機能が低下しているので、消化吸収能力もかなり落ちています。そのため、必要な栄養が取れず栄養障害となります。
通常の一日3回の食事で必要量を摂取するのではなく、一度に分泌される膵液やインスリンや消化吸収のことを考え、分食で一日の必要エネルギーを摂るように心がけます。
さらに、栄養障害が起きていますので、膵臓への負担は少なくした高栄養の食事を摂取していく必要があります。
そのため、タンパク質は、一日に40~60g程度(一般と同等~多い量)を目安に摂取するようにします。
一方、膵石(すい石)の治療についてです。移行期~非代償期に膵石が生じます。
主流は、体外衝撃波結石破砕術(ESWL(extracorporeal shock wave lithotripsy))です。
身体の外から衝撃波を照射し、石を細かく砕く術式です。これは、少なからず痛みを伴うと言われおり、事前に麻酔や鎮痛剤を用います。なお、ESWLは、尿路結石などの結石を粉砕する場合にも用いられています。
さらに、内視鏡での治療があります。
内視鏡的膵管口切開術(EPST(endoscopic pancreatic sphincterotomy ))では、膵液の流出を良好にし、ESWLによる破砕片を排出することができます。
内視鏡的膵管ステント留置術では、膵石除去後の膵管の狭窄を治療することができます。
メディカルスタッフなら知っておきたい【慢性膵炎】のこと|医療系ブログ|えまかたん
[まとめ]
以上、メディカルスタッフ・コメディカルが押さえておきたい「慢性膵炎」の基礎知識でした。
どうでしょう?疑問は解決できたでしょうか?
ざっくり疾患について知ることができたと思います。
これで、一つ疾患に詳しくなりましたね!
コツコツと学んで、ほかのスタッフと差をつけましょう。
もっと詳しく知りたいという方は、以下も確認しておくと良いでしょう。
- e-ヘルスネットhttps://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-01-003.html
- 日本消化器病学会ガイドラインhttps://www.jsge.or.jp/guideline/disease/suien.html
- 看護Roo!https://www.kango-roo.com/learning/3209/
- MSDマニュアルhttps://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/03-%E6%B6%88%E5%8C%96%E5%99%A8%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E8%86%B5%E7%82%8E/%E6%85%A2%E6%80%A7%E8%86%B5%E7%82%8E