「脳梗塞(のうこうそく、cerebral infarction、ICD-10 I63)」について、きちんと理解できていますか?
聞いたことはあるけど・・・詳しく知らないんだよね・・・
- 脳梗塞、脳出血、脳卒中の違いって?
- 脳梗塞になるとどんな症状がでるの?
- 脳梗塞はどうやって治療するの?
このような疑問を持つメディカルスタッフ・コメディカルに向けて、いま押さえておきたい「脳梗塞」の基礎知識を図解でまとめ、ざっくり解説していきます。
では、よろしくお願いします。
この記事では、次の疑問等を解説しています。
- 脳梗塞とは?
- 脳梗塞の症状
- 脳梗塞の治療
- 急変時の対応

こんにちは!
えまかたん(@_emakatan)です。
ここで解説していることは、メディカルスタッフ・コメディカルには必須の基礎知識です。いざという時に困らないように、きちんと押さえておきましょう。
この記事の目次
【脳梗塞とは?】

まず、脳梗塞とは、頭蓋内にある脳の動脈において、血の塊である血栓が詰まることで、その先の脳神経細胞に血液が流れず、酸素や栄養が行き渡らなくなることによって、細胞が元には戻らない、つまり不可逆的な状態になり、障害が生じる病態を指します。
さらに、脳梗塞は以下の3つに大分されます。
- 心原性脳梗塞:心臓で作られた血栓が脳へ行き、脳動脈が詰まり起きたもの
- アテローム血栓性脳梗塞:太い脳動脈に脂質やマクロファージの死骸などからなるプラークと呼ばれるものが生じることで、血管内の内腔が狭くなり、血管に血栓が付着し、詰まったもの
- ラクナ梗塞:脳内の奥にある細い動脈が詰まることで起きたもの
ちなみに、アテローム血栓性脳梗塞とラクナ梗塞はについては、加齢や生活習慣病などが原因で動脈硬化が徐々に進行し、脳動脈を詰まらせたタイプのものになります。
また、脳卒中という病態があるわけではなく、脳梗塞、脳出血に加え、くも膜下出血からなる総称が脳卒中となります。
【脳梗塞の症状]

続いて、脳梗塞の症状についてです。
こちらは、以下のとおり、主症状の頭文字をとった表現・覚え方があります。( )内は、脳梗塞の疑いがあるかどうかを簡単にセルフチェックできる方法についてです。
- Face:顔の麻痺(鏡で「いー」と発音すると、顔の片側がゆがみ、下がる)
- Arm:腕の麻痺(目を閉じた状態で、バレーのレシーブの様に手のひらを上にし、腕を平行にすると、麻痺がある側が少しずつ下がってくる)
- Speech:言語の障害(ろれつが回らず、考えた言葉が出てこない)
- Time:1分1秒が発症からの経過で重要なので、発症時刻を確認する。そして、何よりも重要なのが、このようなFACEの症状が一つでも生じた場合には、すぐに119番することです。
さらに、FASTの主症状の際は、迅速に行動するといったことが必要なため、英文になぞらえ、FASTにBEやACTを加えった表現も聞かれます。
ACTは行動を促すため、また、BEは、Balance(体のふらつき、突然バランスを失う)、Eye(目・見え方の異常、片側もしくは両側の視野が欠ける)の症状も要注意ということでくっつけたりします。
ただ、BEは加齢などほかの要因でもあり得るため、これらが一つ表出しただけで、FASTのように脳梗塞を疑うということにはなりません。
繰り返しますが、FACEの症状が出た場合には、経過観察で様子を見るということはせず、発症時刻を確認したうえで、すぐに119番により救急車を呼ぶことが大切です。
【脳梗塞の治療】

次に、脳梗塞の治療についてです。
主な治療方法として、t-PA療法(血栓溶解療法)があげられます。
こちらは、4時間30分以内に治療を開始しないといけないという時間の制限がありますが、プラスミノーゲンに作用し、脳動脈の血栓を溶かすことができ、予後に大きく影響します。なお、静脈から点滴をします。
そして、 t-PA療法(血栓溶解療法) が24時間、365日治療を受けられる施設を、一次脳卒中センター(PSC)といいます。これは、令和2年度に脳卒中・循環器病対策基本法が施行されたことに伴い、日本の卒中学会が認定する施設になります。全国で約1,000施設認定されています。
さらに、 t-PA療法(血栓溶解療法) のほか、血栓回収療法を 24時間、365日治療を受けられる施設を、血栓回収脳卒中センター(TSC)といいます。 また、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血からなる脳卒中の予後を改善させることができる施設を、包括的脳卒中センター(CSC)といいます。こちらは、全国で200施設程認定されています。
また、いわゆる脳梗塞の一歩手前ともいえる病態に、TIA(一過性脳虚血発作)があります。
こちらは、脳動脈で血栓が詰まり、FACEといった症状が数分から数十分生じます。ただ、血栓が溶けたり、流れたりすると症状が消失します。
しかし、血栓が生じる原因のある人なので、そのまま放置をすると、いずれ脳梗塞になる可能性があります。実際、TIA発症者の5割が48時間以内に再発をすると言われています。
いずれにしても、FACEの症状が出た場合は119番通報します。
【脳梗塞における急変時の対応】

最後に、脳梗塞の急変時の対応についてです。
こらまで何度も伝えてきているとおり、FACEが表出した場合は119番通報で救急車を呼ぶことが最も重要な行動となります。
ただ、その時に注意をしなければいけないことがいくつかあります。
まずは、当たり前のように感じますが、自分で運転をしないことです。また、自分が運転しないけど、早く病院に行った方が良い!ということで、家族など周りの人が自家用車やタクシーなどで受診しようとすることもやめた方がよいでしょう。理由はよく考えると当然ですが、車内で症状が急変する可能性があるためです。これが救急車内であれば、必要最低限の処置が行えます。なお、救急車は全国平均で8.7分という時間で現着するので、1分1秒を争うというものの待つことが適切と言えます。また、発症時刻とどんな症状が生じているのかを周りの人は把握、確認しておく必要があります。
さらに、救急車を呼んだあと、もしくは周りに複数人いる場合は、同時並行で患者の安全の確保をします。
急変時はいずれにしても、同様ですが、周りの人に事態を知らせる必要があります。助けを求めます。
頭蓋内出血は無理に動かすことで、状態が増悪するものもあるため、臥位(寝た姿勢)のまま、むやみに動かさないことが大切です。また、呼吸苦がある場合には、頭部後屈・あご先挙上、下顎挙上の体位により、呼吸状態を安定させる必要があります。さらに、嘔吐・嘔気がある場合には、胃の構造から、左側臥位が胃液や食物残渣の逆流が生じにくいためおすすめですが、ひとまず嘔吐物による窒息を防ぐために、側臥位とする必要があります。
併せて、ベルトやネクタイなど体を締め付けている様子があれば、ゆるめることで呼吸や循環状態が安定する対応も必要となります。体温調節も前述の理由からした方が良いでしょう。
メディカルスタッフなら知っておきたい【脳梗塞】のこと|医療系ブログ|えまかたん[まとめ]
以上、メディカルスタッフ・コメディカルが押さえておきたい「脳梗塞」の基礎知識でした。
どうでしょう?疑問は解決できたでしょうか?
ざっくり疾患について知ることができたと思います。
これで、一つ疾患に詳しくなりました!
コツコツと学んで、ほかのスタッフと差をつけましょう。
もっと詳しく知りたいという方は、以下も確認しておくと良いでしょう。
- e-ヘルスネットhttps://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/
- 日本脳卒中学会https://www.jsts.gr.jp/
- 看護Roo!https://www.kango-roo.com/word/2931/
- MSDマニュアルhttps://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%8A%E3%83%AB/07-%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E7%96%BE%E6%82%A3/%E8%84%B3%E5%8D%92%E4%B8%AD/%E8%99%9A%E8%A1%80%E6%80%A7%E8%84%B3%E5%8D%92%E4%B8%AD