「乳がん」について、きちんと理解できていますか?
小林麻央さん、アンジェリーナジョリーさん等の有名人が乳がんに罹患したというニュースが記憶に残っている方も多いと思います。
ただ、聞いたことはあるけど・・・詳しく知らないんだよね・・・
そんな方に向けて、いま押さえておきたい知識を図解でまとめました。
今回は、乳癌の基礎については、さらっと振り返り、「遺伝性乳がん」について中心に記事にしています。
「遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)」についてもざっくり解説していきます。
では、よろしくお願いします。
この記事では、次の疑問等を解説しています。
- 乳がんとは?
- 遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)とは?
- 遺伝学的検査の保険適用について
- 妊孕性温存について

こんにちは!
えまかたん(@_emakatan)です。
ここで解説していることは、メディカルスタッフ・コメディカルには必須の基礎知識です。いざという時に困らないように、きちんと押さえておきましょう。
- 1 【乳がんとは】(にゅうがん、乳癌、Breast cancer)|症状、治療方法、薬等ざっくり解説|図解[乳がんについて|ICD10コード:C50 乳房の悪性新生物<腫瘍>]
- 2 【乳がんとは】(にゅうがん、乳癌、Breast cancer)|症状、治療方法、薬等ざっくり解説|図解[遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)とは?]
- 3 【乳がんとは】(にゅうがん、乳癌、Breast cancer)|症状、治療方法、薬等ざっくり解説|図解[遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)の遺伝学的検査の保険適用について]
- 4 【乳がんとは】(にゅうがん、乳癌、Breast cancer)|症状、治療方法、薬等ざっくり解説|図解[妊孕性温存とは?]
- 5 【乳がんとは】(にゅうがん、乳癌、Breast cancer)|症状、治療方法、薬等ざっくり解説|図解[まとめ]
この記事の目次
【乳がんとは】(にゅうがん、乳癌、Breast cancer)|症状、治療方法、薬等ざっくり解説|図解
[乳がんについて|ICD10コード:C50 乳房の悪性新生物<腫瘍>]

乳房のほとんどは乳腺でできています。
ちなみに、乳腺は、乳管と小葉から成り立っています。
その乳腺の組織にできる悪性腫瘍のことを、乳がんと言います。
主症状は、乳房にできる、しこりです。
類似症状としては、乳腺症があるので、鑑別が必要となるでしょう。
乳がんのしこりは硬く、境界が割とはっきりしており、触れると動きが悪いことが特徴です。さらに、初期には自覚症状がないことが多いく、月経に左右されません。
好発部位については、乳房の①外側上部②内側上部③外側下部④内側下部⑤乳頭部の順に発症しやくなります。乳がんの約半数が①外側上部にて発症します。
乳がんになる女性は年々増加しています。現在、年間9万人以上が診断されており、女性のがんの中で最も多くなっています。また、乳がんで亡くなる人も1万5千人を超えると推計(2020年)されており、がんによる死亡原因のなかでは、大腸がん、肺がん、膵臓がんに次ぐ第4位となっています。
また、国際がん研究機関(IARC)が2020年12月に発表した統計によると、乳がんは、部位別患者数で肺がんを抜き、最も多く診断されたとあります。
さらに、乳がんには遺伝性のものが、乳がんの中で5~10%あります。
いずれにしても、乳がんの主な治療は、①手術②放射線③薬物療法となります。
治療方針については、当然、がんの性質や進行度・ステージによりますが、それ以外でも、ボディイメージの崩壊や仕事と治療の両立、妊娠・出産などに応じて変わろうかと思います。患者、家族などを中心に考えた上で、最善の選択ができるようになっています。
【乳がんとは】(にゅうがん、乳癌、Breast cancer)|症状、治療方法、薬等ざっくり解説|図解
[遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)とは?]

遺伝性のがんについては、いくつか種類がありますが、その中で最も多いのが、遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC;Hereditary Breast and Ovarian Cancer syndrome)となります。
遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)は、BRCA1あるいはBRCA2という、誰しも持っている遺伝子に、生まれつき変異がある状態(病的バリアント)で診断されます。
遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)の特徴は、乳がんの若年発症や、同時/異時・同側/対側乳がん、乳がんだけでなく卵巣がんも発症した既往歴などが、遺伝性乳がん卵巣がん症候群HBOCを疑うべき臨床的な特徴です。また、複数の乳がんや卵巣がんの家族歴が見られることも遺伝性乳がん卵巣がん症候群HBOCを疑う特徴となります。遺伝性乳がん卵巣がん症候群HBOCは、それ以外の乳がんに比べると、6~12倍発症リスクがあります。
遺伝性乳がん卵巣がん症候群HBOCの手術の主な選択肢としては、①乳房温存療法②乳房全摘手術③術後抗がん剤+ホルモン療法④予防的処置として、乳房・卵巣・卵管のリスク低減手術があります。
なお④のリスク低減手術については、令和2年度(2020年度)~遺伝性乳がん卵巣がん症候群HBOCと診断された方が保険適用となっています。
いずれにしても、二次・三次救急病院には、がん相談支援センターが設置されていることが多いので、遺伝カウンセラーや医療相談員と治療方針や金銭的なことや受けられるサービス等を検討することが望ましいと言えます。
【乳がんとは】(にゅうがん、乳癌、Breast cancer)|症状、治療方法、薬等ざっくり解説|図解
[遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)の遺伝学的検査の保険適用について]

次に、遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC;Hereditary Breast and Ovarian Cancer syndrome)における遺伝学的検査の保険適用についてです。
そもそも、遺伝学的検査とは、遺伝性疾患を診断するための検査となります。厳密にいうと、遺伝子検査とは異なります。
遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)と診断するためには、遺伝学的検査にて、前述したBRCA1あるいはBRCA2遺伝子に変異があるかを調べる必要があります。
そして、遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)における遺伝学的検査の保険適用については、以下の条件を一つ以上満たした場合となります。
- 45歳以下
- 60歳以下のトリプルネガティブと診断
- 複数の原発性(両側、片側複数)の乳がんと診断
- 男性乳がん
- 卵巣がん、卵管がん、もしくは腹膜がんと診断
- 3親等以内の親族に乳がん、もしくは卵巣がんと診断
【乳がんとは】(にゅうがん、乳癌、Breast cancer)|症状、治療方法、薬等ざっくり解説|図解
[妊孕性温存とは?]

乳がんは、40歳代前後が好発年齢ということもあり、女性における妊娠・出産と重なることもあろうかと思います。
乳がんと診断され、薬物療法をすることになった場合、薬物療法の影響で自然妊娠が出来なくなる方もいます。
そのため、妊娠・出産を希望する場合、薬物療法の開始前に、凍結保存が選択肢としてあがってきます。
これを、妊孕性温存(にんようせいおんぞん)と言います。
既婚者は受精卵を、未婚者は卵子・卵巣組織を凍結保存します。
なお、薬物療法中に妊娠があると、少なからず薬の影響が胎児にありますので、治療前の避妊を徹底する必要があります。
そして、乳がん治癒した場合には、乳がんを罹患していない方と同等に妊娠・出産ができると言われています。
【乳がんとは】(にゅうがん、乳癌、Breast cancer)|症状、治療方法、薬等ざっくり解説|図解
[まとめ]
以上、いま押さえておきたい「乳がん~遺伝性~」の基礎知識でした。
どうでしょう、疑問は解決できたでしょうか?
もっと詳しく知りたいという方は、以下も確認しておくと良いでしょう。
- 遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)診療の手引き https://johboc.jp/guidebook2017/
- 厚労省ホームページhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/gan/index.html
もっともっと詳しく知りたいというあなたには、こちらをおすすめします。
【以下、本記事の参考文献リスト】
- 遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)診療の手引き https://johboc.jp/guidebook2017/
- がん情報サービスhttps://ganjoho.jp/public/index.html
- 乳がん.jp https://www.nyugan.jp/
- 厚生労働省ホームページhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/gan/gan_byoin.html
- 厚生労働省ホームページhttps://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/gan_toukei.html